2015年06月01日

リアルスティールの話(3)

リアルスティールのダービーが終わった。

最初は、観に行くつもりはなかった。
暑いし、人が多くてロクに見えないだろうし、何よりおそらく負けるであろう現場に居合わせたくなかった。
朝、友人に「今日行かないと一生ダービーに行く気がしないから、一緒に行かないか」そう誘われた。
少し悩んだが、彼から誘ってくることはとても珍しい。
ならば、と、心を切り替えて電車に乗った。

競馬場について最初に目に飛び込んだのは、内田騎手の勝つシーンだった。
「ああ、あと10分早くついていれば単勝が取れたなぁ」と内心思った。
今日は内田騎手の馬券ばかり買おうと決めていたからだ。
内田騎手はダービーに騎乗馬がいなかったので、それ以外のレースで彼の馬券を買った。
その結果、ダービー前に5000円ほど儲かった。

その5000円をそのまま、ダービーのリアルスティールの単勝へ転がした。
「応援馬券の額と気持ちの強さは比例しない」という言葉をしばしば聞く。
僕は、この時その言葉を思い出して半分嘘だと思った。半分本当だとも思った。
50000円ぐらい買って死ぬ気で応援しようかという考えが脳裏をよぎった。
結局、レース結果に対する確信めいた予想があってできなかった。それがぼくのダービーに対する結論だった。

いよいよ本馬場入場だ。
返し馬のあと福永騎手は、リアルスティールをドゥラメンテの後ろで歩かせていた。
「ドゥラメンテの後ろで競馬をするつもりじゃないか」そう友人に言った。
「大いにあり得るんじゃないか」と友人。
「いや、それは、さすがに…」言葉では否定したものの、きっとそうだと思った。
皐月賞の結果を鑑みるにドゥラメンテの後ろで競馬をした場合、勝ち目はほぼ無い。
どうか自分の予感は外れてくれないか。

発走の時間だ。
ファンファーレが鳴り、11万人の観衆のテンションは最高潮に達した。
全馬ゲートに収まり、一斉にスタートした。

予想が的中することで嬉しくない競馬もあるもんだなと、そう思った。
福永騎手はドゥラメンテの後ろから競馬をした。
お世辞にも、力を出し切ったとは言いがたい内容で、4着に敗れた。
いっぽうドゥラメンテはそのポテンシャルをフルに発揮し、ダービー史上最速のタイムで二冠目を手中に収めた。
ドゥラメンテが勝ち、感極まる友人に握手を求め、心から祝福した。

その後また内田騎手の馬券を買ったが当たらず、友人とともに競馬場をあとにした。
帰りの電車と、降りたあとの喫茶店で彼と競馬の話をたくさんした。
僕なんかの話でも真剣に聞いてくれるいい友人だ。
また会おうと別れ、家へと帰った。

夜もふけて寝ようとしたが、寝付けなかった。
コンビニへ行き、ロクに飲めやしない酒を買った。
勢いで飲み干し、ベッドに横になった。

悔しいだとか悔しくないだとか、もちろんある。
ただ、今の気持ちに一番近そうな言葉は「嬉しくない」だ。
嬉しいの対義語。すごく、嬉しくない。

好きな女の子を、すごくいい男に取られた時のよう。
祝福する気持ちに嘘偽りはないが、決して嬉しくはない。
そんなダービーだった。

こんな気分でも、競馬をやめようとは微塵も思わないのはなぜだろう。
来週からはもう新馬戦が始まる。来年のダービーに向けての戦いの幕開けだ。

posted by Lion at 06:05 | Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする